大学「大衆化」の時代 企業出身者の視点を入れ、大学を変える契機に

「研究大学」以外の大衆的な「教育中心大学」では、教員の半数近くは実務家出身でよい――。そう語るのは、東京大学などで職員組織の改革を行ってきた上杉道世氏(大学マネジメント研究会副会長)だ。実務家教員の役割や求められる能力開発の努力について、上杉氏に話を聞いた。

大学と実務の世界が分裂、日本の知的環境の課題

──実務家教員が求められる背景、担うべき役割について、どのように見ていますか。

上杉道世

上杉道世

大学マネジメント研究会 副会長元・東京大学 事務局長
京都大学卒、1974年文部省に採用。2003年東京大学事務局長(2004年同理事)、2007年(独)日本スポーツ振興センター理事、2010年慶應義塾大学信濃町キャンパス事務長、2015年大正大学理事長特別補佐・質保証推進室長・客員教授。著書に『大学職員は変わる』(2009年)、『大学職員は成長する』(2013年)、『大学職員の近未来』(2016年)、『大学職員のグランドデザイン』(2019年)。

本来、大学は自由に自分たちの見識でカリキュラムを編成し、教員を採用できますから、特別に「実務家教員」といったカテゴリ-を設けなくても、その大学の方針で教員採用をすればいいはずです。ところが、ほとんどの学生は就職する現実があるにもかかわらず、大学で教育研究を担うのは、アカデミックな世界でキャリアを積み、実務の世界を経験していない教員ばかりであり、現実の需要に応えられなくなっています。

この背景には、明治以来のアカデミックな世界と実務の世界が分裂している日本の知的環境の問題があると思います。旧帝国大学に代表されるアカデミックな世界は、海外での学位取得など、論文に象徴される学術的な達成をもって権威付けされてきました…

(※全文:2419文字 画像:あり)

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