『未来の授業 SDGs×ライフキャリア探究BOOK』

『未来の授業 SDGs×ライフキャリア探究BOOK ─ゆみ、サステナブルファッションに出会う!?編』

『未来の授業 SDGs×ライフキャリア探究BOOK
─ゆみ、サステナブルファッションに出会う!?編』

佐藤 真久 監修、NPO法人ETIC. 編集協力/144頁/1800円+税/宣伝会議

国際社会が共通して2030年までに達成すべき目標であるSDGs(持続可能な開発目標)。刻々と期限が迫る中、教育現場でも関連する取り組みが増えているが、17の目標を真に自分ごと化するのは容易ではない。本書は、主に中学生・高校生を対象として、身近な課題からSDGsを理解し、さらに行動に移すきっかけにしてもらおうと編まれたシリーズの最新刊だ。

今回のテーマは「持続可能なライフスタイルの共創」。これまでと同様、直感・行動タイプのけんた、アイデア実践タイプのゆみ、価値・意義重視タイプのみのり、理論派タイプのアレックスという個性的な4人の登場人物を軸に、立場が異なる多くの人々が協力し合いながら行動を起こす大切さを伝えるストーリーが進んでいく。加えて、どこからともなく謎のSDGs博士が現れては、4人に SDGs や社会課題についてレクチャーと問いかけをする。

SDGsの基本を押さえる第1章に続き、第2章では日本国内にもあるさまざまな課題が31の切り口にまとめられている。先進国のわりに高い相対的貧困率、マイノリティの人々の困難、希薄化・孤独化するコミュニティ、じわじわ広がる教育格差など、若い読者にとって関連深い話題も多い。

第3章と第4章では、課題解決に向けた取り組みが紹介されている。例えば、環境と天然素材に配慮した世界初のエコ染色システムを開発した広島県の坂本デニム、海の生態系を育むアマモ場の再生を目指す赤塚植物園グループ、京都駅前で「都市養蜂」に取り組むザ・サウザンド京都など、意欲的な企業の物語がワクワクするタッチで描かれる。子どもたちも何かしら関わりしろを見出だせるだろう。

また、各章にはそれぞれの「SDGsチャレンジストーリー」が収録されている。例えば第1話では、ゆみとみのりがショッピングモールで新作の服を見つけてはしゃいでいる。店内のリサイクルBOXに気づき、「着なくなった服は回収に出せばOK!」と思ったところにSDGs博士が登場。途上国でごみの山になってしまうこともある現実を知り、ゆみたちは愕然とする。自分たちのライフスタイルとグローバルな課題を結びつけ、自然とSDGsへの理解が深まる仕掛けだ。

巻末には「教材としての本書の活用方法」として、教育関係者向けの情報も盛り込まれており、現場教員にとっては非常に実用的だ。探究活動との親和性に関する解説も分かりやすい。関連書籍・教材・ウェブサイト一覧は、発展的な授業展開の参考として大いに役立つだろう。

新刊一覧

●学校教育一般

教員不足
誰が子どもを支えるのか
佐久間 亜紀 著/254頁/960円+税/岩波書店

教職員が知っておきたい!
スクールロイヤーが今よく受ける相談事例107

―法的リスクを最小限にする判断のポイント―
有年 麻美 著/162頁/2500円+税/第一法規株式会社

PTA、こうやって変えました!
脱強制・改革の超実践的ノウハウ
全国PTA連絡協議会 編著/216頁/1800円+税/学芸出版社

問い続ける 学び続ける
生徒指導・キャリア教育
友清 由希子、黒川 雅幸、小泉 令三 編著/228頁/2300円+税/北大路書房

「これくらいできないと困るのはきみだよ」?
勅使川原 真衣 編著、野口 晃菜、竹端 寛、武田 緑、川上 康則 著/376頁/2050円+税/東洋館出版社

学校全体で挑む
「誰ひとり」取り残されない学校づくり
すべての子供のウェルビーイングを目指す
野口 晃菜、前川 圭一郎 編著、戸田市立喜沢小学校 著/224頁/2300円+税/明治図書出版

●学級経営

見るだけでレベルアップ!
こんこ先生の「型」でつかむ板書術
平垣 聖大 著、樋口 万太郎 監修/128頁/2000円+税/学陽書房

●高等教育

大学改革
―自律するドイツ、つまずく日本
竹中 亨 著/224頁/860円+税/中央公論新社

●ICT

[図解]AI時代の教師が知っておきたい
IT・情報リテラシー

校務DXに必要な基礎知識
小林 祐紀、郡司 竜平、安井 政樹 監修、岩﨑 有朋、津下 哲也、山口 眞希、安藤 昇 著/192頁/1700円+税/インプレス

デジタル化時代の学校教育を支える
ICT支援員という仕事
五十嵐 晶子 著/224頁/1900円+税/小学館

●幼児教育

「不適切な保育」の予防・発生時対応ガイドブック
浅井 拓久也 著/144頁/2200円+税/翔泳社

●特別支援教育

もし君が君を信じられなくなっても
不登校生徒が集まる音楽学校

毛利 直之、首藤 厚之 著/208頁/1600円+税/西日本新聞社

●人材育成・マネジメント

障害者雇用の「困った」を解決!
発達障害・知的障害のある社員を活かすサポートブック
石橋 恵、和田 直美 著/224頁/1500円+税/秀和システム

日本人が知らない 外国人労働者のひみつ
中村 大介 著/192頁/1500円+税/白夜書房

キーエンス流 性弱説経営
人は善でも悪でもなく弱いものだと考えてみる
高杉 康成 著/240頁/1700円+税/日経BP

●その他

教育にひそむジェンダー
学校・家庭・メディアが「らしさ」を強いる
中野 円佳 著/208頁/860円+税/筑摩書房

科学的根拠(エビデンス)で子育て
教育経済学の最前線
中室 牧子 著/312頁/1800円+税/ダイヤモンド社

最新脳研究でわかった
子どもの脳を傷つける親がやっていること
友田 明美 著/224頁/950円+税/SBクリエイティブ

注目の一冊

『最新教育動向2025 必ず押さえておきたい時事ワード60&視点120』

『最新教育動向2025
必ず押さえておきたい時事ワード60&視点120』
教育の未来を研究する会 編/264頁/2000円+税/明治図書出版

教員必須の最新時事をコンパクトにまとめ、毎年編纂されるシリーズの最新版。今回新たなテーマとして取り上げられているのが「NEXT GIGA」だ。

全自治体がGIGAスクール構想への整備を終えた今、同構想の第2期への対応が求められている。ICTに苦手意識のある読者には負担感もあるかもしれない。だが、常に学び直しが必要なのは教育業界に限った話ではない。

各分野の専門家による徹底解説に加え、QRコードから全項目の一次資料にアクセスできる点で利便性も高い。常に手元に置いて参照すべき1冊だ。