『未来の授業 SDGsパートナーシップBOOK』

『未来の授業 SDGsパートナーシップBOOK』

『未来の授業 SDGsパートナーシップBOOK』
佐藤 真久 監修、認定NPO法人ETIC.編集協力/176頁/1800円+税/宣伝会議

国際社会が共通して2030年までに達成すべき目標であるSDGs。既に企業や自治体、NPOなどによる取り組みが活発になっており、教育現場に生かされる機会も増えてきた。だが、SDGsで求められる17の目標を自分ごととして考えるのは容易ではない。本書は、主に中学生・高校生を対象として、自分自身のあり方、生き方、働き方とSDGsの関連を考えるきっかけにしてもらおうと編まれたシリーズの第4弾だ。

本書が読者に伝えようとしているのは、SDGsの各目標が相互に関わり合っていること、さらに17番目の目標として掲げられたパートナーシップが課題解決の鍵となることだ。個性的な4人の登場人物を軸に、立場が異なる多くの人々が社会に参加し、協力し合いながら、それぞれができるアクションを起こす大切さを伝えるストーリーが進んでいく。直感・行動タイプのけんた、アイデア実践タイプのゆみ、価値・意義重視タイプのみのり、理論タイプのゆずる。彼ら4人が学びを深める様子と、心強いサポート役のSDGs博士の解説を通し、パートナーシップにこそ社会を変える力があることが感じ取れる構成となっている。類書とは異なる本書の特徴は、第1章で日本社会独自の課題とSDGs目標の関連性を分かりやすく示している点にある。「やり直し」のしにくさや先進国の割に高い相対的貧困率、じわじわと広がる教育格差やインフラの老朽化など、身近な社会課題を挙げ、続く第2章で課題解決に向けたアクション事例を紹介している。

登場人物たちが地域活性化を学ぶというストーリー仕立ての第3章では、実際に全国の中高生が活躍するプロジェクトが紹介されている。中高生が応募できるSDGsアクションコンテストの一覧も付され、探究学習のテーマ探しに大いに役立つだろう。

最後の第4章を読むと、既に活発に動き出している企業などの取り組みを知ることができる。事業担当者が実名で登場し、社会的責任を果たそうと真摯に取り組んでいる様子が実感を伴って伝わってくる。職業体験やキャリア教育のきっかけとしても読めるだろう。

なお、巻末には「教材としての本書の活用方法」など、教育関係者向けの情報も盛り込まれており、すぐに授業に生かしたいと思っている現場の教員にとっても非常に実用的。シリーズ既刊の『未来の授業─私たちのSDGs探究BOOK』『未来の授業─SDGsライフキャリアBOOK』『未来の授業─SDGsダイバーシティBOOK』と合わせて読むことで、いっそう立体的な理解につながるだろう。

新刊一覧

●学校教育一般

伝説の校長講話
渋幕・渋渋は何を大切にしているのか
田村 哲夫 著、古沢 由紀子 聞き手/280頁/1600円+税/中央公論新社

教壇に立つ20代のあなたに
伝えたいこと

樋口 万太郎、小谷 宗 著/230頁/1800円+税/東洋館出版社

部活動顧問の断り方
西川 純 著/160頁/1800円+税/東洋館出版社

とりま、やってみよう!
土作彰の実践教育大学

土作 彰 著/144頁/1800円+税/東洋館出版社

23人の校長が贈る94のメッセージ
校長講話12ヵ月
学校講話・メッセージ研究会 編/200頁/2100円+税/教育開発研究所

●学級経営

中学校・高等学校
授業が変わる学習評価深化論

観点別評価で学力を伸ばす「学びの舞台づくり」
石井 英真 著/160頁/1800円+税/図書文化社

一枚ポートフォリオ評価論OPPAでつくる授業
子どもと教師を幸せにする一枚の紙
堀 哲夫 監修、中島 雅子 編著/192頁/2200円+税/東洋館出版社

●高等教育

アメリカの大学生が学んでいる
本物の教養

斉藤 淳 著/216頁/900円+税/SBクリエイティブ

「個」を強くする大学
別府 昭郎、飯田 和人 編/80頁/1000円+税/学文社

●ICT

学校と教育委員会・自治体をつなぐ教育DX推進ガイド
山本 朋弘 編著/112頁/2100円+税/明治図書出版

「自ら学ぶ力」を育てるGIGAスクール時代の学びのデザイン
樋口 綾香 著/128頁/1900円+税/東洋館出版社

●幼児教育

子どもの発達からみる
「10の姿」の保育実践

無藤 隆 監修、大方 美香 編著/224頁/2400円+税/ぎょうせい

●人材育成・マネジメント

「本当に役立った」マネジメントの
名著64冊を1冊にまとめてみた

中尾 隆一郎 著/360頁/1970円+税/PHP研究所

メンバーが自ら動き出す「究極の自動化」
高橋 佑果 著/256頁/1600円+税/大和出版

採用がうまくいく会社がやっていること
福留 文治、児玉 里美 著/256頁/1400円+税/かんき出版

社員が努力して、
働けば働くほど報われる仕組み

社員にとって働きがいのある会社になるヒント
釣谷 宏行 著/308頁/1600円+税/ダイヤモンド社

最短で目標達成できる最強のマネジメント術
任せるリーダーシップ 見るだけノート
伊庭 正康 監修/224頁/1982円+税/宝島社

●その他

教育大国シンガポール
日本は何を学べるか
中野 円佳 著/240頁/840円+税/光文社

学校するからだ
矢野 利裕 著/304頁/1800円+税/晶文社

注目の一冊

『ウェルビーイングな学校をつくる子どもが毎日行きたい、先生が働きたいと思える学校へ』

『ウェルビーイングな学校をつくる
子どもが毎日行きたい、先生が働きたいと思える学校へ』
中島 晴美 著/224頁/2000円+税/教育開発研究所

教育界でも広まり始めた「ウェルビーイング」。いちはやく学校現場に取り入れた公立小学校での2年間の実践をまとめたのが本書だ。

校長を務める著者は、ウェルビーイングの第一人者らから直接学び、精神論ではなく、科学的な理論に基づいた取り組みを推進してきた。その結果、98%の子どもが「学校が楽しい」と感じ、学力もアップ、さらに教員の健康状態も良くなり、異動希望はゼロという大きな成果を上げている。子どもと教師の「幸せ」を考える上で、本書は大きな指針となるだろう。