『挑戦する教室──実践が生徒を熱中させる!』

『挑戦する教室─実践が生徒を熱中させる!』

『挑戦する教室─実践が生徒を熱中させる!』
中村 寛大 著、小寺 圭 監修/272頁/1800円+税/武久出版

「次世代リーダーの創出」をミッションに掲げる教育系スタートアップのタイガーモブは、学校教育に世界50カ国を舞台にした実践機会を届けている。これまで同社が80を超える学校で、「挑戦する教室」と銘打ったプログラムを提供する中で得られた知見と事例をベースに、教育現場で「探究的な学習」に奮闘する先生方に向けて編まれたのが本書だ。

タイガーモブ共同代表取締役を務める著者が、本書で何より強調していることの1つが、自ら行動を起こすことによって能動的に学ぶ「Learning by Doing」である。日本の学校教育で行われているのは、主に「Learning by Being Taught」、つまり誰かに教えてもらうことによって学ぶ方法だ。著者は後者の学びを否定しているわけではない。だが、一般に教育機関は実社会とは一定の距離があるため、学校内で本当の「実践」をするのは難しい。だからこそタイガーモブは「Learning by Doing」にこだわり、本書で実践のヒントを明かしている。

例えば第3章では、長野日本大学学園での実践を例に、教室を熱狂の渦に巻き込む9つのステップが示されている。最初のステップは、生徒が自分の現在位置とビジョンを知ることだ。自分自身の今と将来のありたい姿をイメージすることで、初めて学ぶ準備が整い、挑戦のスタートラインに立てる。次のステップは、生徒にとっての重要な課題、つまりやりがいを提示する。その次は、とにかく取り組んでみること。なかなか一歩を踏み出せない場合は、教員もともに踏み出してみようと著者は勧める。最初の一歩さえ踏み出せれば、生徒の実践はグンと加速するという。こうした取り組みを進めるうちに、いつの間にか教員まで熱狂の渦に巻き込まれる姿を著者はしばしば目にしてきたという。「まるで運動会の最後を飾る選抜リレーのシーンのように、自分たちのチームを本気で応援する。そんなシーンが学校のいたる所で発生する」。著者は「挑戦する教室」の効果をこう語る。

最後の第8章では、「挑戦する教室」を通じて生まれた若き次世代リーダーたちの生の声が採録されている。教育関係者なら誰しも「こうした生徒を育てたい!」と思うような、生き生きとした様子が描かれている。本書を読めば、狭い日本、さらには通常の学校教育という枠にとらわれず、世界を舞台にした探究的な学習に挑戦したくなるだろう。

【書籍プレゼント】タイガーモブは先着10名に本書を献本している。
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新刊一覧

●教育学

戦後教育史
貧困・校内暴力・いじめから、不登校・発達障害問題まで
小国 喜弘 著/336頁/940円+税/中央公論新社

●学校教育一般

新版 学校を改革する
学びの共同体の構想と実践
佐藤 学 著/72頁/630円+税/岩波書店

新任3年目までに身につけたい
教師の指導術10の原理・100の原則

堀裕 嗣 著/224頁/2260円+税/明治図書出版

学びの中心はやっぱり生徒だ!
「個別化された学び」と「思考の習慣」
ベナ・カリック、アリソン・ズムダ 著、中井 悠加、田中 理紗、飯村 寧史、吉田 新一郎 訳/304頁/2400円+税/新評論

教師をめざす人のための 臨床経験の理論と実践
「臨床の知」が拓く教員養成課程
森下 孟、青木 一 編/224頁/3000円+税/北大路書房

学校というブラック企業
元公立中学教師の本音
のぶ 著/208頁/1400円+税/創元社

●高等教育

再考 大学入試改革の論理
倉元 直樹 監修、久保 沙織 編/214頁/2900円+税/金子書房

●ICT

10歳からの図解でわかるメディア・リテラシー
「情報を読み解く力&発信する力」が身につく本
中橋雄 監修/128頁/1650円+税/メイツ出版

●幼児教育

保育の評価指標
保育者としての専門性向上を目指す
井口 眞美 著/184頁/4000円+税/八千代出版

改訂新装版 子どもの脳を発達させる
ペアレンティング・トレーニング

育てにくい子ほどよく伸びる
成田 奈緒子、上岡 勇二 著、子育て科学アクシス 編/152頁/1700円+税/合同出版

●特別支援教育

レイトトーカー(LT)の理解と支援
ことばの遅れがある子ども
田中 裕美子 編、遠藤 俊介、金屋 麻衣 著/126頁/2000円+税/学苑社

発達障害のある子どもの
リラクセーションプログラム

かんたんにできる
高橋 眞琴 編著、尾関 美和、亀井 有美、中村 友香、山﨑 真義 著/126頁/2000円+税/学苑社

●人材育成・マネジメント

IT職場のトラブル対処 決定版
杉本 一裕 著/256頁/2000円+税/日経BP

人事評価データの分析入門
人的資産の時価評価指標である
評価データの分析・活用方法
東狐 貴一 著/105頁/1200円+税/生産性労働情報センター

社内SNSを活用して企業文化を変える やわらかデザイン
富士通ラーニングメディア 著/222頁/1900円+税/富士通ラーニングメディア

HUMAN ∞ TRANSFORMATION
日本企業をリデザインする、人起点の変革リーダーシップ
Ridgelinez 編、田中 道昭 監修/248頁/1800円+税/日経BP

●その他

【新版二版】教育カウンセラー標準テキスト・初級編
日本教育カウンセラー協会 編/248頁/3300円+税/図書文化社

【改訂版】教師にできる自殺予防
子どものSOSを見逃さない
髙橋 聡美 著/192頁/1900円+税/教育開発研究所

「低学歴国」ニッポン
日本経済新聞社 編/216頁/900円+税/日本経済新聞出版

ひとりあそびの教科書
宇野 常寛 著/224頁/1420円+税/河出書房新社

注目の一冊

『公教育で社会をつくる ほんとうの対話、ほんとうの自由』

『公教育で社会をつくる
ほんとうの対話、ほんとうの自由』

リヒテルズ 直子、苫野 一徳 著/256頁/1700円+税/日本評論社

公教育とは国や市町村が管理・運営するのではなく、「私たちみんなのもの」と信じる著者が、公教育のあるべき姿を探る対話をまとめたのが本書だ。

本書が示す議論の射程は広い。民主的市民社会における「自由」の意味を問うところから始まり、子どもたちが自由を身につける対話力の育成について、オランダでの実践例が語られる。

二人の著者による理論と実践、日本とオランダの実情から、公教育の未来に希望を見出そうとする本書は、幅広い層に向けて対話を促すきっかけになるだろう。