『教師のためのSDGsアクティビティー・ハンドブック』

『教師のためのSDGsアクティビティー・ハンドブック』

『教師のためのSDGsアクティビティー・ハンドブック』
香川 文代、デイヴィット・セルビー 著/402頁/4500円+税/玉川大学出版部

世界中にさまざまな課題が山積するなか、国際協力の重要性は増す一方だ。学校教育においてもグローバルマインドを持った人材育成が求められる。だが、何をどう教えればいいのか戸惑う教師も多いだろう。そうした教育者にお勧めなのが本書だ。SDGsに関するさまざまな社会的課題について考えるきっかけとなる95のアクティビティーが掲載され、明日の授業からすぐに活用できる教師用ハンドブックだ。いわばSDGs教育の「虎の巻」である。

中学3年生から高校3年生を対象としたアクティビティーは、「環境」「貧困・不平等」「人権」「外交・リーダーシップ」「国際協力」の5分野に整理されている。「環境」分野から「広告の分析」というアクティビティーの例を見てみよう。事前準備として、生徒たちに各々が興味や関心を持つ製品の広告を用意させる。授業当日、まずはグループワークで互いの広告を見せながら、その広告を選んだ理由などを話し合った後、グループ内で最も魅力的な広告を選ぶ。次にクラス全体でのディスカッションに進む。そうして対話を重ねながら、広告と消費者の選択のつながりを考え、生徒が批判的な視点を持つ消費者になることを狙うアクティビティーだ。

ディスカッションを主体とするクラス運営に不慣れな教師もいるかもしれない。だが本書には、ファシリテーションのヒントとして、生徒の思考を促す問いかけの例がいくつも示されているため安心だ。経験が少ない教師にとっては非常に心強いガイドとなるだろう。

このハンドブックは、発行元の玉川学園で2014〜2018年度の5年間に実施された「スーパーグローバルハイスクールプログラム(SGH)」における主要カリキュラムの成果物という側面もある。同学園では、中学3年生から高校3年生までの4年間で、国際機関へのキャリア選択を実現する全人的リーダーの資質を養うプロジェクトを実践。900名を超える生徒が参加した。本書はそのために作成されたアクティビティーに、参加した教師や生徒たちからのフィードバックを反映し、さまざまな学校でも使いやすいように編纂された。そうしたフィードバックのいくつかは「Teacher Voice」「Student Voice」として収録され、本書が生きた教材であることを感じさせる。

SDGsの目標達成期限である2030年が刻々と近づく今、本書を手に、持続可能な世界を目指す教育実践が全国に広がることを期待したい。SDGsに関する授業を考えている教師必読の一冊。

新刊一覧

●学校教育一般

校長の力
学校が変わらない理由、変わる秘訣
工藤 勇一 著/256頁/880円+税/中央公論新社

学校の法律がこれ1冊でわかる
教育法規便覧 令和6年版

窪田 眞二、澤田 千秋 著/624頁/4200円+税/学陽書房

教壇に立つ30代のあなたに伝えたいこと
樋口 万太郎、日野 英之、垣内 幸太 著/160頁/1700円+税/東洋館出版社

「対話」で教職員の心理的安全性を高める
みんなが安心・成長できる学校のつくり方
加藤 敏行 著/160頁/2000円+税/教育開発研究所

子どもの自己調整スキルを磨く
個別最適な学びと協働的な学びを根底から支える
横田 富信 著/248頁/1900円+税/東洋館出版社

●学級経営

小学校教師のための言いかえ図鑑
アンガーマネジメントの手法をいかし、
上手に叱る・伝えるテクニック
戸田 久実 著/192頁/2000円+税/誠文堂新光社

授業はタイミングが9割
中野 裕己 著/192頁/1900円+税/明治図書出版

●高等教育

アメリカ高等教育のガバナンス改革
カリフォルニア大学の自律と統制をめぐる葛藤
中世 古貴彦 著/252頁/3600円+税/九州大学出版会

君たち文系はどう生きるか
東大で「鬼」と呼ばれた教授が伝える
人生に活きる授業と成長へのヒント
荒巻 健二 著/248頁/2000円+税/昭和女子大学出版会

●ICT

教師の仕事がAIで変わる!
さる先生のChatGPTの教科書
坂本 良晶 著/116頁/1900円+税/学陽書房

●特別支援教育

ことばをはぐくむ【新装版】
発達に遅れのある子どもたちのために
中川 信子 著/160頁/1600円+税/ぶどう社

ニューロマイノリティ
発達障害の子どもたちを内側から理解する
横道 誠、青山 誠 編、村中 直人、すぷりんと他 著/312頁/2200円+税/北大路書房

教師と支援者のための
“令和型不登校”対応クイックマニュアル

神村 栄一 著/128頁/2000円+税/ぎょうせい

●人材育成・マネジメント

コミュニケーションを変えればチームが変わる
3人のマネジャーとの対話から探り出す「メンバーの正解」とは?
川村 和義 著/232頁/1600円+税/CCCメディアハウス

リーダーは「戦略」よりも
「戦術」を鍛えなさい

加来耕三 著/256頁/1580円+税/クロスメディア・パブリッシング

静かに退職する若者たち
部下との1on1の前に知っておいてほしいこと
金間 大介 著/336頁/1700円+税/PHP研究所

●その他

「叱らない」が子どもを苦しめる
藪下 遊、高坂 康雅 著/288頁/920円+税/筑摩書房

部活動は日本の強み
クラブ自治の継承と発展
神谷 拓 著/176頁/1800円+税/大修館書店

日本子ども資料年鑑2024
社会福祉法人恩賜財団 母子愛育会
愛育研究所 編/400頁/10000円+税/KTC中央出版

注目の一冊

『世界一のアントレプレナーシップ育成プログラム革新的事業を実現させるための必須演習43』

『世界一のアントレプレナー
シップ育成プログラム
革新的事業を実現させるための必須演習43』
ハイディ・M・ネック、カンディダ・G・ブラッシュ、パトリシア・G・グリーン 著、島岡 未来子、朝日 透、山川 恭弘 監訳、T-UNITE+チーム 翻訳/480頁/2700円+税/翔泳社

日本では起業家が育ちにくいと言われる。そこで、アントレプレナーシップ教育に特化した米国のバブソン大学で、絶大な人気を誇る授業を書籍化した本書を参考にしたい。

遊び、共感、創造、実験、省察の5つの実践に沿って43もの演習を収録。「もし、私が自分自身の顧客だったら?」「なぜあなたに投資する必要があるのか」など、タイトルを見るだけで刺激的な演習が並ぶ。授業の進め方がタイムラインとともに細やかに示され、あらゆる指導者の痒いところに手が届く構成がうれしい。