『キャリアをつくる独学力』

『キャリアをつくる独学力─プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント』

『キャリアをつくる独学力─プロフェッショナル人材として生き抜くための50のヒント』

高橋 俊介 著/340頁/1700円+税/東洋経済新報社

いま、かつてないほどに「独学」への関心が高まっている。人生100年時代、さらにウィズコロナ時代を迎え、ビジネスモデルが大変革を遂げようとするなか、もはや「これまでと同じ」ではプロフェッショナルとして生き残れない。学び続けるため、最も求められているスキルが「独学力」である。キャリア論の第一人者が著した本書は、漠然とした「教養」のためではなく、学びをキャリアに直結させる考え方やノウハウに徹している点に特徴がある。

「社会人のための学び」の背景を知るには、いま起きている変化の本質に迫る第1章や、日本型雇用の課題に触れた第2章が役に立つ。具体的な独学力の高め方を知りたければ、第3章以降を先に読み進めるのもいい。

著者の経験によれば、独学力が高い人の学びのスタイルには3つの特徴がある。1つ目に、社内での過去の経験など「内向きのタテ」に偏ることなく、主体的な個々人が形成する学び合いの場などに参加し、「外向きのヨコ」を志向していること。2つ目に、詰め込み学習から、楽しさと意味を感じる学びへ転換していること。3つ目に、正解のない課題に対し、自分の考えを明確にし、発信していく「自論」の力をつける学びであることだ。「なぜ学ぶのか(Why)」「何を学ぶのか(What)」「いかに学ぶのか(How)」を主体的に決める意識が欠かせない。つまり、独学の第一歩は「受け身の学び」から「主体的な学び」への転換だと著者は言う。

なかでも強調されているのは、「専門性コンピテンシー」を可視化することだ。著者の定義によれば、高い成果を継続的かつ安定的に出せる専門的知見や行動能力、思考能力を併せ持つことが専門性コンピテンシーだ。経験や知識だけでは真のプロフェッショナルとは言えない。専門性コンピテンシーを可視化した上で、自身が身を置く業界や仕事領域において、次に到来する潮流をいち早く見出し、先取りして勉強し、専門性を高める「先物キャリア」が重要だという。組織から見れば、そうした人材が経営のレジリエンスを高めることになる。さらに、自分のキャリアを支える柱となる「背骨」、つまり専門性のテーマを持っていると強い。そのテーマがキャリアばかりでなく、人生の「背骨」にもなるなら、そこに長期的にコミットすることで、将来のリタイア後の人生をも豊かにすることができるだろう。

何かを学びたい人、教養とスキルを高めたい人だけでなく、組織において独学力が高い人材を「育てる」立場の人にとっても、数多くのヒントを提供し、示唆にあふれた一冊だ。

新刊一覧

●教育学

教師の社会学
フランスにみる教職の現在とジェンダー

園山 大祐 監修・監訳、田川 千尋 監訳、京免 徹雄、小畑 理香 編著/448頁/5000円+税/勁草書房

学校教育一般

できる評価・続けられる評価
澤井 陽介 著/192頁/1900円+税/東洋館出版社

拡張的学習と教育イノベーション
活動理論との対話

山住 勝広 編著/300頁/2800円+税/ミネルヴァ書房

養護教諭のためのスキルアップガイド
中村 富美子 編著/120頁/1600円+税/明治図書出版

●英語教育

英語教育論争史
江利川 春雄 著/296頁/1850円+税/講談社

●高等教育

今、求められる大学の「組織開発」
生き残るために戦略より必要なこと

岩田 雅明 著/256頁/3000円+税/ぎょうせい

●ICT

事前指導から授業例まで
GIGAスクールの1人1台端末活用アイデア100

中川 一史 監修、安井 政樹 編著、札幌市立幌北小学校 著/128頁/2200円+税/明治図書出版

●幼児教育

3~6歳 考える力がぐんぐん伸びるおしゃべりゲーム
かたばみ塾、つむぱぱ 著/208頁/1400円+税/小学館クリエイティブ

ルポ「多文化共生保育は今」
平野 恵久 著/178頁/1700円+税/東京図書出版

●特別支援教育

学校の中の発達障害
「多数派」「標準」「友達」に合わせられない子どもたち

本田 秀夫 著/288頁/900円+税/SBクリエイティブ

●人材育成・マネジメント

日本企業のマネジメント・コントロール
自律・信頼・イノベーション

横田 絵理 著/192頁/3400円+税/中央経済社

日本マクドナルド 「挑戦と変革」の経営
“スマイル”と共に歩んだ50年

日本マクドナルド株式会社 著/232頁/1600円+税/東洋経済新報社

経営12カ条
経営者として貫くべきこと

稲盛 和夫 著/248頁/1700円+税/日本経済新聞出版

自分事化の組織論
主体的に考え行動するためのストーリーとロジック

佐々木 利廣、福原 康司 編著/208頁/2300円+税/学文社

部下のやる気はいらない
岩崎 徹也 著/236頁/1650円+税/日本能率協会マネジメントセンター

●その他

探究モードへの挑戦
高度化・自律化をめざすSDGs時代の人づくり

田村 学、佐藤 真久 編著/280頁/3000円+税/人言洞

中学生から身につけておきたい
賢く生きるための金融リテラシー

子どもの学び編集部 著/136頁/1600円+税/ジャムハウス

外あそびのススメ
ぼくも遊びたい、わたしも入れて!!

前橋 明 編著/208頁1800円+税/大学教育出版

注目の一冊

『大学のデジタル変革DXによる教育の未来』

『大学のデジタル変革
DXによる教育の未来』

井上 雅裕 編著、角田 和巳、長原 礼宗、八重樫 理人ほか 著/242頁/ 3100円+税/東京電機大学出版局

コロナ禍を経て教育のデジタル化が加速し、距離や時間の制約を超えたオンライン授業が当たり前になった。大学間・国際・産学連携による新しい教育モデルが生まれれば、大学組織や教育プロセスにいっそう大きな変化が生まれるだろう。

そこで日本工学教育協会では、大学教育のDXの方向性、および先行モデルに関する多面的な調査研究を実施。その成果をまとめた本書は、教育機関の教職員はもちろん、企業の人材開発担当者など、あらゆる「教育」に携わる読者にも有用だろう。