『自分のスキルをアップデートし続ける リスキリング』

『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』

『自分のスキルをアップデートし続けるリスキリング』
後藤 宗明 著/336頁/1850円+税/日本能率協会マネジメントセンター

人生100年時代の今、誰もが生涯学び続けることが必要だ。「学び直し」「リカレント教育」という言葉もよく聞かれるようになっている。それに比べて「リスキリング」は少々耳慣れないかもしれない。「リスキリング」は「学び直し」とは似て非なるものだと著者は言う。本書によればリスキリングとは、「新しいことを学び、新しいスキルを身につけ実践し、そして新しい業務や職業に就くこと」だ。リカレント教育では学び直しそのものを目的とし、職業と関係のない学びも含むのに対し、リスキリングの目的はあくまで新しい職業に就くことだ。特にデジタル化に関して、仕事に直結するスキル習得が重視されている点が大きく異なる。

世界でリスキリングへの注目が高まっている背景の1つに「技術的失業」と呼ばれる問題がある。テクノロジーの導入によって雇用が失われる社会的課題が深刻になっている。個人の生き残り戦略に加え、社会全体として衰退産業から成長産業へ労働者をシフトする意味でもリスキリングが欠かせない。世界経済フォーラムは、「2030年までに全世界で10億人をリスキリングする」と宣言しているという。

こうしたトレンドに日本はどこまで対応できているだろうか。「世界デジタル競争力ランキング」で日本は毎年ランクを落とし続け、2021年度の「人材の知識レベル」指標では全世界で47位。デジタル後進国であることは明らかだ。さらにPwCの調査によれば、職場に導入される新たなテクノロジーの活用への順応に「とても自信がある」と回答した日本人はたったの5%だったという。トップはインドの68%と大きな開きがある。

本書はリスキリングにまつわる世界のトレンドを詳述した上で、具体的な方法や実践のプロセス、さらに日本でもリスキリングが当たり前となった先にある、スキルベース採用の時代におけるキャリアアップと人材の流動化など、リスキリングを軸に働き方に関する幅広い視野を提供してくれる。

著者の執筆動機は、「日本のビジネスパーソンが新しいスキルを身につけ、社内で新しい業務に就く、また転職して新しい職業に就く支援」をすることだ。自身が43歳で初の転職活動をした際、実に100社以上に落とされ、人生に全く希望が持てない日々を過ごした経験を踏まえ、リスキリングを日本に広めるようになったという。誰もが身につけるべき最も重要なスキルは、自分自身をリスキリングするスキルそのものだという著者の主張は、職業を問わず、全ての読者に当てはまるだろう。

新刊一覧

●教育学

教師論 第二版
中嶋 みさき、中井 睦美 編著/148頁/2100円+税/学文社

京都学派の教育思想
歴史哲学と教育哲学の架橋

山田 真由美 著/272頁/5000円+税/勁草書房

●学校教育一般

教師を楽しみ直す
教職生活に悩んでいる先生たちへ

前田 健志、土居 佑治 著/176頁/1800円+税/学事出版

実践的教職概論
高岡 正幸 著/176頁/2000円+税/学事出版

●学級経営

「居場所」のある学級・学校づくり
生徒が「安心」できる教育環境

ローリー・バロン、パティー・キニー 著、山﨑 めぐみ、吉田新一郎 訳/368頁/2700円+税/新評論

●特別支援教育

知的障害教育の授業づくりAtoZ
子ども主体の知的障害教育の理論と実践を巡る語りあい

名古屋 恒彦 監修、佐々木 全 編著/180頁/2500円+税/ジアース教育新社

自閉スペクトラム症 マイペースなきみに家族はすったもんだ
井上 雅彦 監修、全国手をつなぐ育成会連合会 編/104頁/1300円+税/中央法規出版

フリースクールを考えたら最初に読む本
石井 志昂 著/192頁/1400円+税/主婦の友社

不登校の子どもとフリースクール
持続可能な居場所づくりのために

武井 哲郎、矢野 良晃、橋本 あかね 編著/156頁/2000円+税/晃洋書房

不登校からの進学受験ガイド
受験で不登校を解決する方法

山田 佳央 著/312頁/1600円+税/ユサブル

●人材育成・マネジメント

日本流DX
「人」と「ノウハウ」 究極のアナログをデジタルにするDX進化論

各務 茂雄 著/258頁/1800円+税/東洋経済新報社

チームコンサルティング理論
企業変革と持続的成長のメソッド

若松 孝彦、タナベコンサルティンググループ戦略総合研究所 編著/296頁/1600円+税/ダイヤモンド社

アンラーン戦略
「過去の成功」を手放すことでありえないほどの力を引き出す

バリー・オライリー 著、中竹 竜二 監訳、山内 あゆ子 訳/340頁/2000円+税/ダイヤモンド社

組織はリーダー次第
失敗する9タイプ

奥原 正明 著/216頁/1000円+税/信山社

●その他

勇者たちの中学受験
わが子が本気になったとき、私の目が覚めたとき

おおた としまさ 著/256頁/1500円+税/大和書房

ソーシャル・エモーショナル・ラーニング(SEL)
非認知能力を育てる教育フレームワーク

渡辺 弥生、小泉 令三 編/248頁/2600円+税/福村出版

子どもの「強み」の育て方
かくれた才能を上手に引き出す心理学アプローチ

メアリー・レックマイヤー 著、古屋 博子 訳/336頁/2400円+税/日本経済新聞出版

進路格差
<つまずく生徒>の困難と支援に向き合う

朝比奈 なを 著/256頁/850円+税/朝日新聞出版

注目の一冊

『わたしたちの暮らしは世界とつながっている 持続可能な地球社会をつくる』

『わたしたちの暮らしは世界とつながっている 持続可能な地球社会をつくる』
谷本 寛治 著/185頁/2000円+税/千倉書房

教育現場でもSDGsを取り上げる機会が増えてきた。どの目標も大事だが、個別に見るだけではSDGsの全体像はつかみにくい。本書は主にティーンエイジャーを対象に、毎日の暮らしを通して、複雑な世界への理解を促そうと編まれたものだ。

物質的に豊かな生活を続けるには、地球1つでは足りない。まずはその事実を起点に、持続可能なモノづくりやプラスチックゴミの減らし方などを提示する。若い読者が持続可能で循環型の地球社会づくりに興味を持つきっかけとなるだろう。