『わたし×IT=最強説』

『わたし×IT=最強説 女子&ジェンダーマイノリティがITで活躍するための手引書』

『わたし×IT=最強説
女子&ジェンダーマイノリティがITで活躍するための手引書』

NPO法人Waffle 著/176頁/1700円+税/リトル・モア

小学校のプログラミング学習が必修化され、子どものうちから男女の別なくIT教育を受ける機会が増えてきた。だが、大学理学部の女子比率は27.2%と3割を切り、工学部に至ってはたった14.5%と非常に少ない。工学系の女性割合は、OECD加盟国116カ国中109位と最低ランク。そうしたこともあり、現在IT分野で活躍しているのは男性ばかりなのが現実だ。

「もともと女子は理数科目が苦手」とも言われるが、実はPISAの理数科目の学力調査結果を見ると、日本の高1女子の成績は数学が77カ国中7位、科学は6位とトップクラスだ。「女子は理数科目が苦手」はステレオタイプに過ぎないことが分かる。

こうした状況を変えていこうと、女子&ジェンダーマイノリティ向けにIT体験プログラムやイベントを開催するのが本書の著者であるNPO法人Waffleだ。テクノロジー分野の教育とエンパワーメントを通じ、ジェンダーギャップの是正を目指し、政府への政策提言も行う。「難しく捉えられがちなテクノロジーを、お菓子のワッフルのようにポップに」という思いで団体名をWaffleと名付けただけあって、本書も初心者にもとっつきやすい配慮があふれている。

まずはITが私たちの暮らしとどう関係しているか、今の社会課題を変える可能性を秘めているかについて、身近な例を上げながら紹介。例えば、近頃コンビニやスーパーでよく見かける「セルフレジ」。腕時計のように身に着け、心拍数や睡眠の質を常に測定できるウェアラブルデバイスなど、さまざまなIT技術が暮らしの便利さを支えている。また、目が見えない人や弱視の人たち向けに、画面読み上げ機能がついたスマホが普及するなど、ハンディキャップを軽減するためにも、IT技術は欠かせない。

続いて本書は、エンジニアや研究者として活躍する16人の声を紹介する。通常「ロールモデル」というと、既にキャリアを築いた大人を想定しがちだが、ここで取り上げられたうち5人は高校生を含む学生だ。IT分野への興味関心を素直に育て、行動するきっかけさえつかめれば、やりたいことは何でもできる──。ITにはそんな可能性があふれていることが感じられる。タイトルにあるように、自分のやりたいこととITをかけ合わせれば、まさに「最強」だと思えてくる。

プログラミング必修時代に欠かせない、女子&ジェンダーマイノリティのための新しい進路応援ガイドであると同時に、保護者や教育現場で働く人はもちろん、企業でDXに取り組む人にもお勧めしたい。

新刊一覧

●学校教育一般

汗かけ恥かけ文をかけ。
渡辺 道治 著/168頁/1800円+税/東洋館出版社

アンラーンのすすめ
深見 太一 著/176頁/1800円+税/東洋館出版社

それでも僕は、「評価」に異議を唱えたい
めがね旦那 著/160頁/1700円+税/東洋館出版社

変動する総合・探究学習
欧米と日本 歴史と現在
伊藤 実歩子 編著/234頁/2200円+税/大修館書店

「けテぶれ」授業革命!
葛原 祥太 著/208頁/2000円+税/学陽書房

超具体!自由進度学習はじめの1歩
難波 駿 著/216頁/2000円+税/東洋館出版社

探究の達人
子どもが夢中になって学ぶ!「探究心」の育て方
神田 昌典 監修、学修デザイナー協会 編著/216頁/1500円+税/実業之日本社

自分たちで学校を変える!
教師のわくわくを生み出す
プロジェクト型業務改善のススメ
澤田 真由美 著/216頁/2200円+税/教育開発研究所

●学級経営

心理的安全性と学級経営
大前 暁政 著/224頁/2000円+税/東洋館出版社

子どもと心でつながる教師の対話力
渡辺 道治 著/184頁/1800円+税/学陽書房

Neo classroom 学級づくりの新時代
小野 領一 著/256頁/2000円+税/東洋館出版社

●高等教育

教育系博士課程における
リカレント・モデルの構築

溝邊 和成、久我 直人、髙橋 敏之、田村 隆宏、西山 修、松本 剛、水落 芳明、若田 美香 著/148頁/2400円+税/学事出版

オセアニア諸国の高等教育への
接続と社会的公正

澤田 敬人、奥田 久春 編著/120頁/2300円+税/学事出版

●ICT

いちばんやさしい
Google Classroomの教本

人気教師が教える生徒とつながる
デジタル学級づくり
古川 俊 著/192頁/2100円+税/インプレス

●特別支援教育

発達障害・グレーゾーンの子が
グーンと伸びた 声かけ・接し方大全

イライラ・不安・パニックを減らす100のスキル
小嶋 悠紀 著、かなしろにゃんこ。イラスト・その他/288頁/1600円+税/講談社

学校に行けない子どもの気持ちがわかる本
今野 陽悦 著/192頁/1500円+税/WAVE出版

●人材育成・マネジメント

マネジャーのための人事評価で
最高のチームをつくる方法

「査定する場」から「共に成長する場」へ
川内 正直 著/272頁/1800円+税/翔泳社

イノベーションのジレンマからの脱出
日本初のデジタルバンク
「みんなの銀行」誕生の軌跡に学ぶ
みんなの銀行 著/312頁/2000円+税/日経BP

こんな会社で働きたい
ウェルビーイングな働き方を実現する
健康経営企業編
クロスメディアHR総合研究所 著/140頁/1480円+税/クロスメディア・パブリッシング

女性部下や後輩をもつ人のための
1on1の教科書ト

池原 真佐子 著/240頁/1600円+税/日本実業出版社

注目の一冊

『考える。動く。自由になる。15歳からの人生戦略』

『考える。動く。自由になる。
15歳からの人生戦略』

工藤 勇一 著/256頁/1500円+税/実務教育出版

義務教育を終え、自分の意志で進路を決めるスタートラインに立つのが15歳。この世代の子どもたちに向け、人生のコンパスとなるようメディアでも話題の校長先生がエールを送る。

正解のない時代、「生きる力」が欠かせないと言われる。でもどうやって育めばいいのか。そのヒントが本書のタイトルにある。この3つさえ実践できればきっと大丈夫。この本を最後まで「考え終えた」時、揺るぎない自己肯定感が身についているはず。そう断言する著者の言葉が力強い。子ども向け哲学書の決定版だ。