『AI時代を生き抜くということ─ChatGPTとリスキリング』

『AI時代を生き抜くということ─ChatGPTとリスキリング』

『AI時代を生き抜くということ
─ChatGPTとリスキリング』
石角 友愛 著/240頁/1800円+税/日経BP

ChatGPTが登場して以来、「AIに仕事が奪われるのか」という話題が以前にも増して熱を帯びている。だが、米国シリコンバレーでAIビジネスの最前線に立つ本書の著者は、新しい生成AIの技術やサービスが登場するたびに右往左往するのはナンセンスと一刀両断する。なぜなら、継続的なリスキリングは今や誰にとっても当たり前に求められるプロセスだからだ。

それを象徴するのが「4 to 4」という言葉だ。「4年かけて学んだ知識で4年働く」という意味で、シリコンバレーをはじめとする米国で、AI時代のキャリア形成の核となる考え方だ。大学の4年間で学んだスキルで40年働ける「4 to 40」の時代が、いよいよ過去のものになったことを肝に銘じるべきだろう。

これから求められる人材像として著者が唱えるのが「π(パイ)型人材2.0」だ。1つの確固とした専門的な「ドメインスキル」に加え、リスキリングで新たに磨いた「スパイク(とがった)スキル」で相乗効果を生み、両者を統合する「マスタースキル」を備えている人材のことだ。さらに、「4 to 4」の理論で継続的なリスキリングを行い、スパイクスキルがドメインスキルとなり、太くなったドメインスキルがマスタースキルを成長させるというサイクルを回しながら、「π」のサイズを大きくしていくイメージだ。

こうした人材を目指そうとする読者に対し、著者は「LEARN+Aステップ」と呼ばれる道筋を示す。紙幅の都合で詳細には触れないが、興味深いのはスキルの棚卸しにChatGPTをフル活用している点だ。具体的な事例に沿ったプロンプト(生成AIへの命令や質問)が示されているため、読者が自分のスキルセットを可視化する際に大いに参考になる。

さらに、効果的なスキルの組み合わせを分析する上で便利な「『ドメイン』×『スパイク』スキルマッチングリスト」が用意されているほか、リスキリングの際に陥りがちな6つの勘違いを挙げるなどして、読者が迷いなくステップアップできるよう配慮が行き届いている。例えば、「インプット=勉強をしている」と思い込んだり、やる気や気合いに頼ろうとしたりするのも、よくある勘違いだと警鐘を鳴らす。

本書は生成AI時代に求められる「学び続ける人材」に向けた実践ガイドだ。AIの力を借りることで、思いもよらなかったスキルを発見できることもあるだろう。第一線で活躍し続けようと意欲を燃やす方に、ぜひ一読を薦めたい。

新刊一覧

●教育学

対話的教育論の探究
子どもの哲学が描く民主的な社会
小玉 重夫 監修、田中 伸、豊田 光世 編/272頁/4200円+税/東京大学出版会

超越性の教育学
田中 智志 著/388頁/12000円+税/東京大学出版会

徳の教育と哲学
理論から実践、そして応用まで
立花 幸司 編著/180頁/2200円+税/東洋館出版社

●教科学習

英国名門校(パブリック・スクール)で出会った最強のリベラルアーツ
世界のリーダーは歴史をどう学ぶか
松原 直美 著/240頁/1450円+税/自由国民社

体育がきらい
坂本 拓弥 著/224頁/880円+税/筑摩書房

●学級経営

子どもに任せる勇気と教師の仕掛け
子どもが主体になる教室ができるまで
深見 太一 編著/256頁/2200円+税/明治図書出版

教師3年目までに身につけたい!
子どもが動く叱り方のルール
城ヶ﨑 滋雄 著/128頁/1800円+税/学陽書房

教師の聞き方ひとつで
高学年クラスはこう変わる!

丸岡 慎弥 著/144頁/2000円+税/学陽書房

●高等教育

キャンパスソーシャルワーク
大学における学生支援の必要性
米村 美奈、中澤 未美子 編/212頁/2000円+税/みらい

●ICT

学びや困難さ・合理的配慮に対応した
GIGA端末・ICT活用のアイデア
新谷 洋介 監修・編著/160頁/2400円+税/ジアース教育新社

●特別支援教育

マンガでわかる
発達障害の子どもたち
本田 秀夫 著、フクチマミ 漫画/160頁/1400円+税/SBクリエイティブ

発達障害の子の勉強・学校・心のケア
当事者の私がいま伝えたいこと
横道 誠 著/192頁/1500円+税/大和書房

●人材育成・マネジメント

増補改訂版
いい人財が集まる会社の採用の思考法

酒井 利昌 著、坂本 光司 監修/470頁/1800円+税/フォレスト出版

人を活性化する経営
「バイオエネルギー理論」実践編
近藤 宣之、香川 哲 著/248頁/1000円+税/ワニブックス

ジョブ・クラフティングのマネジメント
森永 雄太 著/232頁/2800円+税/千倉書房

上司ガチャ
20代の年収と成長の伸びしろは上司との向き合い方が9割
藤﨑 友輔 著/208頁/1680円+税/クロスメディア・パブリッシング

●その他

わが子に「ヤバい」と言わせない
親の語彙力

矢野 耕平 著/256頁/1400円+税/KADOKAWA

気はやさしくて力持ち
子育てをめぐる往復書簡
内田 樹、三砂 ちづる 著/336頁/1800円+税/晶文社

注目の一冊

『カウンセラー、元不登校の高校生たちと、フリースクールをつくる。

『カウンセラー、元不登校の高校生たちと、
フリースクールをつくる。

学校に居づらい子どもたちが元気に賑わう集団づくり』
野中 浩一 著/150頁/1700円+税/遠見書房

不登校やいじめ認知件数が過去最多を大きく更新したと報じられている。勉強や集団行動を「する」以前に、学校やクラスに「いる」こと自体に困難を抱えているケースがある。本書はそうした前提に立った「ちょっと変な対人援助論(はじめにより)」だ。

島根に28歳でIターン移住した著者は、ひょんなことからフリースクールを立ち上げることになった。本書には、元不登校の高校生たちから学び、ともに作り上げてきた15年間の試行錯誤の過程が、様々なエピソードとともに綴られる。心に響く1冊だ。