『2040 教育のミライ』

『2040 教育のミライ』

2040 教育のミライ
礒津 政明 著/392頁/1800円+税/実務教育出版

ソニーグループ初の教育事業会社として2015年に設立されたソニー・グローバルエデュケーション(SGE)では、ロボット・プログラミング学習キット「KOOV®」や体験型プログラミング教材「PROC™」を開発し、既に全国1000以上の教育機関で使われている。また、教育分野にイノベーションを起こすため「教育×ブロックチェーン」「教育×メタバース」分野にも積極的だ。こうした事業を牽引するSGE代表の著者は、海外の先進的な教育にも精通する教育フューチャリストでもある。その見識から、20年後までの「ソニー流学びの未来予測」を縦横無尽に語り尽くしているのが本書だ。

本書で語られるメタバースとは、「人々が交流する物理的空間の制約から解放された仮想世界」を指す。空間の制約がなくなれば「学びの幅」の制約もなくなる。宇宙空間への脱出や恐竜の生態調査など、時空を超えた体験もできれば、赤血球になって人体の仕組みを内部から観察することもできる。現代の感覚ではまだ荒唐無稽にも思えるが、教育産業がメタバースに取り込まれていけば、2040年には十分に起こりうる学習環境だと著者は述べる。実際、SGEでは多様な学びのための新たな仮想空間を構築中で、理想にはまだ遠いものの、確かな教育効果が見え始めているという。

著者が教育にメタバースやVR、ARなどを持ち出すのは、現在と未来では教育の「目的地」が異なると考えているためだ。近い将来、オンラインゲームで多国籍のプレイヤーと協力しながら複雑な作業をこなし、自ら開発したゲームを公開して収入を得られる人が、一流大学出身者より重宝される時代が来るかもしれない。そうした未来を生きる子どもたちが、従来型の教育を受けていては世界に取り残されてしまうのは明らかだろう。

もちろん、どのような未来にあっても、教育の核心は「人と人のつながり」にあると著者は考える。教育メタバースの真骨頂は、「人と人の新たなつながりを生み出すこと」にあるというのが著者の主張だ。なぜなら、場所の制約にとらわれない教育メタバースは、蛇口をひねれば水が出るように、何かを教えてほしいときに「講師」がすぐ見つかる社会インフラでもあるからだ。この場合の「講師」は、もはや「学校の先生」だけではない。民間企業で働く人が臨時講師として積極的に教育に参画することになるだろう。

こうして、さまざまな人々が関係し合いながら自律的に運営されるエコシステムが、著者が理想として描く教育メタバースの姿だ。最先端の教育テクノロジーと「先の見えない社会」を生き抜く方法がよくわかる一冊だ。

新刊一覧

●教育学

最新の重要教育用語がよくわかる本
教育ジャーナル編集部 編/144頁/1700円+税/学研教育みらい

●学校教育一般

教師×転職
「辞める」か「続ける」か、
二択を超えて視野を広げる18の転職ストーリー

教師の未来を応援する会 編/168頁/1800円+税/教育開発研究所

子どもを支える 「チーム学校」ケースブック
水野 治久 著/152頁/2000円+税/金子書房

●学級経営

中学校 荒れと崩壊を防ぐ学級の「仕組み」大全
川端 成實 著/208頁/2100円+税/明治図書出版

●ICT

1人1台タブレットPCらくらく活用授業
國眼 厚志 著/136頁/1800円+税/学研教育みらい

ICTで最適化
高校教師の仕事アップデート

籾山 英輝 著/144頁/1800円+税/明治図書出版

●幼児教育

子どもが対話する
保育「サークルタイム」のすすめ

大豆生田 啓友、豪田 トモ 著/80頁/1300円+税/小学館

●特別支援教育

特別な支援が必要な子たちの
「自分研究」のススメ
子どもの「当事者研究」の実践

熊谷 晋一郎 監修、森村 美和子 著/116頁/1800円+税/金子書房

発達症のある子どもの支援入門
行動や対人関係が気になる
幼児の保育・教育・療育

岩永 竜一郎 著/178頁/1700円+税/同成社

複合化・多様化した課題に対応する
ジェネラリスト・ソーシャルワークを実践するために
スクールソーシャルワーカーの事例から

高良 麻子、佐々木 千里 編/120頁/2000円+税/かもがわ出版

●人材育成・マネジメント

自走する組織の作り方
統率力不要のリーダー論

くればやし ひろあき 著/246頁/1500円+税/青山ライフ出版

組織をうごかす中間管理職
挟まれ役の心得とリーダーシップ

スコット・マウツ 著/296頁/1700円+税/アルク

後継社長力
加賀 隼⼈ 著/208頁/1580円+税/クロスメディア・パブリッシング

メンバーを戦力化する心の公式
リーダーのための質問型コミュニケーション

安井 匠 著/208頁/1500円+税/みらいパブリッシング

●その他

子ども白書2022
日本子どもを守る会 編/192頁/2800円+税/かもがわ出版

子どもに学ぶ言葉の認知科学
広瀬 友紀 著/272頁/860円+税/筑摩書房

いいところをどんどん伸ばす
帝京高校・前田流 「伸びしろ」の見つけ方・育て方

前田 三夫 著/288頁/1400円+税/日本実業出版社

予習の科学
「深い理解」につなげる家庭学習

篠ヶ谷 圭太 著/208頁/2100円+税/図書文化社

注目の一冊

『GIGAスクールを成功させる教師の言葉かけ』

GIGAスクールを成功させる
教師の言葉かけ

西川 純 編著/144頁/1800円+税/東洋館出版社

「端末を導入したものの、なかなかうまくいかない」。そんな現場の悩みに答えるため、著者は個別最適化した学習は「子どもに任せよう」と提案する。問題も起こるが、その原因を明らかにし、教師の不安に1つひとつ応えてくれるのが本書だ。

ポイントは適切な「言葉かけ」。例えば、教師自身が端末の使い方がわからないとき、素直に子どもたちを巻き込み、互いに教え合うように語ればいいという。「言葉かけ」次第で子どもたちが主体的に動き出す。その躍動感を生むきっかけとなる1冊だ。