『注意ワード・ポイントを押さえれば 文章は簡単に直せる!!』

『注意ワード・ポイントを押さえれば 文章は簡単に直せる!!─執筆・推敲・リライト・校閲……これ1冊で解決』

『注意ワード・ポイントを押さえれば 文章は簡単に直せる!!
─執筆・推敲・リライト・校閲……これ1冊で解決』
前田 安正 著/256頁/1800円+税/東京堂出版

文章を書くことに自信がある。記者や文筆家以外で、そう言い切れる人はごくわずかだろう。書店に行けば、実に多くの文章の書き方指南本が並んでいることからも、「書く」に対する苦手意識を持つ人の多さがうかがえる。しかも、自分で書くのも大変なのに、業務上、「人の書いた文章」を直さなければならない立場の人も多い。そうした読者に向け、文章の直し方にフォーカスし、きちんと「伝わる文章」に整えるテクニックを指南するのが本書だ。

例えば、「文構造のルール」として著者が第一に挙げるのは、「主語と述語の関係を明確に」することだ。それには、主語に続く「は」と「が」の正しい使い分けを知る必要がある。主語から遠い述語(述部)にかかる働きをするのが「は」で、一方の「が」は直近の述語(述部)のみに影響するというルールがある。「子どもが公園で遊んでいるのを見ていると楽しい気分になる」と「子どもは公園で遊んでいるのを見ていると楽しい気分になる」では、「は」と「が」の1文字しか違わないにもかかわらず、まったく文意が異なることに気づけなければならない。

ほかにも著者は、安易に「等」をつけることで複数の解釈が生じたり、「〜だと思います」で結ぶことで、発言に責任を持っていない印象を与えたりするリスクを指摘。「大谷翔平選手の活躍は、普通にすごい」といった、日ごろ「普通に」使ってしまいがちな表現にも注意を促してくれる。

誰もがネットで発信する昨今、「バズる」もしくは「ササる」文を書きたいという欲求がこれまでになく高まっている。だが、ビジネスシーンで求められるのは、何より簡潔に書くことだ。文章を読んでもらうことは相手の時間を奪うこと。著者はこう釘を刺し、「さっと読んで、すっと理解できる文章こそが、名文だと心得」ようと説く。

なお、現在は文章コンサルタンティングファームを営む著者は、長年にわたって朝日新聞社の校閲部門に籍を置きながら、ことばに関するコラムやエッセイを書き続け、紙面編集部も経験したという。筆者、編集、校閲の立場を知るプロ中のプロだ。第3章の「新聞記事の変遷から文章を考える」や第6章の「筆者、デスク・編集、校閲の視点から見た文章」には、豊富なキャリアを持つ著者ならではの知見があふれ、ジャーナリズムに関する読み物としても興味深い。

教育関係者はもちろん、企業や自治体の広報担当者、部下の報告書を読む立場にあるビジネスパーソンなど、「人の書いた文章」に関わるすべての人に必携の1冊だ。

新刊一覧

●教育学

森のような教師
日本とドイツの学窓から
渡邊 隆信 著/176頁/2000円+税/共和国

●学校教育一般

教師のためのChatGPT入門
福原 将之 著/160頁/1800円+税/明治図書出版

救え!!トイレの若手さん
前川 智美 著/232頁/2100円+税/東洋館出版社

小学校と大学で
未知に挑む力はこうして育つ

今泉 博、住吉 廣行 著/304頁/1600円+税/子どもの未来社

運動部活動から地域スポーツクラブ活動へ
新しいブカツのビジョンとミッション
友添 秀則 編著/338頁/2500円+税/大修館書店

やさしくわかる 生徒指導提要ガイドブック
八並 光俊、石隈 利紀、田村 節子、家近 早苗 編著/176頁/2000円+税/明治図書出版

●学級経営

小学校 ちょっとで効果じわじわ
授業がうまくいくアイデア100
ちょこっとLab 著/112頁/2060円+税/明治図書出版

●高等教育

深い理解のために
高等学校 観点別評価入門
八田 幸恵、渡邉 久暢 著/154頁/1900円+税/学事出版

●幼児教育

日本の保育アップデート!
子どもが中心の「共主体」の保育へ
大豆生田 啓友 監修、おおえだ けいこ 著/176頁/2100円+税/小学館

●特別支援教育

特別支援教育×ロイロノート
個別最適化された学び・協働的な学びを実現するICT活用
水内 豊和 監修、後藤 匡敬、山崎 智仁 編著/144頁/2000円+税/さくら社

読み書き困難のある子どもたちへの支援
子どもとICTをつなぐKIKUTAメソッド
菊田 史子、河野 俊寛 著/120頁/1800円+税/金子書房

●人材育成・マネジメント

リスキリング【実践編】
後藤 宗明 著/320頁/1850円+税/日本能率協会マネジメントセンター

「やりたいこと」が次々見つかる!
自分らしく生きている人の学びの引き出し術

尾石 晴 著/240頁/1550円+税/KADOKAWA

わたしからはじまる心理的安全性
リーダーでもメンバーでもできる「働きやすさ」をつくる方法70
塩見 康史、なかむらアサミ 著/256頁/1680円+税/翔泳社

理想で部下は育たない
部下と部門の成果を高める超現実リーダー論
井上 恒郎 著/240頁/1500円+税/ダイヤモンド社

リーダーになったら知っておきたい12のこと
組織人事コンサルが教えるこれからのチームマネジメント
加藤 守和 著/320頁/1700円+税/日本能率協会マネジメントセンター

いちばんやさしい「組織開発」のはじめ方
中村 和彦 監修、早瀬 信、高橋 妙子、瀬山 暁夫 著/264頁/1700円+税/ダイヤモンド社

●その他

ことば、身体、学び
「できるようになる」とはどういうことか
  為末 大、今井 むつみ 著/232頁/950円+税/扶桑社

図解ポケット STEMがよくわかる本
松村 佳奈 著/146頁/1000円+税/秀和システム

注目の一冊

『インクルーシブ教育ハンドブック』

『インクルーシブ教育ハンドブック』
ラニ・フロリアン 編著、倉石 一郎、佐藤 貴宣、渋谷 亮、濱元 伸彦、伊藤 駿 監訳/864頁/12000円+税/北大路書房

国際的に高く評価されている特別支援教育の大著の中から、日本の教育のあり方を考えるうえで参考になるトピックが厳選・抄訳されている。

ハンドブックと銘打たれてはいるが、監訳者によれば、本書は事典でもマニュアルでもなく、原著寄稿者各々が実践と理論とを往還しながら重ねてきた「思索の書」だ。全35章と大部なだけに、理念的であるばかりでなく、教育実践にわかりやすく役立つ章も多い。実践家と研究者の双方にとって、本書がインクルーシブ教育の最先端への糸口となるだろう。