IT分野のジェンダーギャップ解消へ、女子中高生中心にIT教育を支援

“理系は男性”という固定観念の根強いIT・STEM分野。ITエンジニアのキャリアを選ぶ女性は男性に比べ圧倒的に少ないが、女性のIT人材が増えれば、80万人といわれるIT人材不足は解消される。固定観念の壁を取り払い、10代女性のIT分野への関心を促す『Waffle』の取り組みに注目する。

テクノロジーへのイメージを転換
主体的な進路選択を後押し

田中 沙弥果

田中 沙弥果

一般社団法人Waffle 共同代表
2017年NPO法人みんなのコード入職後、2019年にIT分野のジェンダーギャップを解消するために一般社団法人Waffleを設立。2020年には日本政府主催の国際女性会議WAW!2020にユース代表として選出。2020年Forbes JAPAN誌「世界を変える30歳未満30人」受賞。内閣府 若者円卓会議 委員。経産省「デジタル関連部活支援の在り方に関する検討会」有識者。

「#ITをカラフルに」をコンセプトに2019年に設立した一般社団法人「Waffle(ワッフル)」。テクノロジー分野の教育とエンパワーメントを通じ、ジェンダーギャップの解消を目指す。

Waffleの団体名は、「難しく捉えられがちなテクノロジーを、お菓子のワッフルのようにポップに」という想いで付けられた。

2021年9月のOECD(経済協力開発機構)の発表では、2019年に大学などの高等教育機関に入学した学生のうち、STEM(科学・技術・工学・数学)分野に占める女性の割合は、OECD加盟国の中で日本が最も低く、女性の理系人材育成の遅れが目立つ。

「原因の1つとして、ITへの興味が薄い、かつキャリアと結びついていないことがあります」とWaffleの設立者で共同代表の田中沙弥果氏は話す。課題解決の1つとして、Waffleでは女子中高生に特化したオンラインITコース「Waffle Camp」や、キャリアイベント「Waffle Festival」などを開催。女子中高生向けの国際ビジネスコンテスト「Technovation Girls(テクノベーション・ガールズ)」に出場するチームの支援なども行っている。

「イベントやITコース参加前と後でITに関するイメージについてアンケートを取ると、参加前は“暗い”、“難しい”“できる人しか働けない”といったイメージが多いですが、参加後は“楽しそう”“自分もITを掛け合わせて進路に繋げたい”というイメージに変わります」

一方で、本人がITに興味を持っても、親にITのイメージがない場合は進路選択に難色を示され、結婚や出産しても長く働ける仕事として国家資格がある薬剤師や医療系を勧められることが多い。Waffleでは、そうした様々な壁を払拭し、ITを含む理工系への主体的な進路選択を後押しするべく、女子中高生向けのIT教育・キャリア支援を進めている。

「Technovation Girls」
より多くの女子中高生に機会を

Technovation Girls(2021年)日本公式ピッチイベントの開催の様子

Technovation Girls(2021年)日本公式ピッチイベントの開催の様子

設立当初からメイン活動の1つとして行ってきたのが「Technovation Girls」の日本出場チームのサポート。

「Technovation Girls」は米国の非営利団体Technovationが主催し、2010年から行っている次世代の女性IT起業家育成を目的とした国際コンテスト。10~18歳の女性が対象で、世界最大の女子中高生向け社会課題解決型アプリコンテストとして、これまでに世界100か国以上、5万人以上が参加している。

Waffleは、日本リージョン公式アンバサダーとして、日本国内からの参加者を募集。日本独自の「起業家ブートキャンプ」と「アプリ開発ブートキャンプ」を無料で提供し、同コンテストに求められるデザイン思考や起業家マインド、プログラミングスキルの習得などを中心に総合的にサポートする。ブートキャンプの内容は、初心者でも社会課題を解決するアプリを作るために必要なスキルを身に付けられるようWaffleが開発した独自カリキュラムとなっている。

「プログラミングの知識ゼロ、家にパソコンがなくてもスマホの貸出し等、極力参加へのハードルを下げています。最終的にはアプリを作って国際コンテストに応募しますが、学習プログラムとして、より多くの女子中高生に機会を届けたいと思っています」

IT社会を変える女性リーダーを育てるのが、「Technovation Girls」のミッション。プログラミングスキルだけでなく、起業家マインドを同時に育成していくことが重要だ。

「コンテストでのアプリ制作・ビジネスプランの作成はチームでの取り組みとなります。我々のブートキャンプでは、プログラミングスキルと同時に、チームの在り方、マインドセットも学んでいただきます。コンテストに参加する人の中には、プログラミングに興味があるのではなく、起業や社会課題解決に興味がある人も半分ほどいます」。今年は約150名が参加。既に「起業家ブートキャンプ」と「アプリ開発ブートキャンプ」を終え、自分たちの課題をブラッシュアップし、現在、モバイルアプリを作っていく段階に入っている。

ロールモデルとの対話が重要
今後は大学生へも展開

2020年7月7日にスタートした「Waffle Camp」は、ウェブサイト開発のスキルとコーディング学習コミュニティを提供するオンライン・プログラム。過去総開催数は30回、総参加者数は200名に上る。「1日で完結し、気軽に学習できることを重視しました」と言うとおり、内容は、事前学習、オンラインでのインタラクティブな1日学習、2週間の事後学習となっており、全体3週間のうち、拘束されるのは1日のみだ。

講師は全員女性エンジニア。内閣府の調査によれば、理数系科目に女性教員がいると、男性のみと比較して、「理系タイプである/どちらかといえば理系タイプである」とする女子生徒の割合が約11%高くなるデータもあり、身近な先生の性別が女子生徒の興味や進路選択に関わっていることが示唆されている。プログラムではWebサイトの制作だけでなく、キャリアをイメージできるロールモデルとの対話を組み合わせ、女子中高生の進路選択、キャリア選択も同時に支援する。

より幅広い学生へ参加機会を届けるため、2022年からは自治体開催による無料開催を計画している。日本全国5~7都市の自治体や男女共同参画センターと協力し、県内、市内の学生に対し、無料で「Waffle Camp」を提供していく。既に、複数の自治体での開催が決まっている。

今後は、大学生向けへの展開を進める。2021年11月、Waffleの活動は、Google.orgが全世界を対象に実施する助成金プログラム「Google.orgインパクトチャレンジ for Women and Girls」に採択された(全世界約8,000件の応募のうち34団体・組織が採択)。

Waffleでは、助成金のもと、日本国内の意欲ある女子大学生に対し、就労レベルのITスキルとリーダーシップトレーニングを提供する。

「大学生向けの展開では、情報系の大学に行っていない大学生に対しても就労可能なITスキルの教育及びアントレプレナーシップのマインドセットを教育し、IT系のインターンシップ獲得までを一貫して支援する伴走型のプログラムを展開していく予定です」

個別で学生を集めるところから開始し、成功事例が出てくれば大学との連携も視野に入れる。

「地方の大学で女性を増やしたいと思う大学は多いと思います。将来的にはそうした大学と連携しながら、理工系を選択する女性や地元に残ってエンジニアとして働く女性などを増やしていければと思います」