『事業構想原論 理念を基軸とした価値構想の体系』
『事業構想原論
─理念を基軸とした価値構想の体系』
東英弥 著/688頁/本体2800円+税/
学校法人先端教育機構
事業構想大学院大学、社会構想大学院大学を開学し、学校法人先端教育機構の理事長として実務と教育研究の融合を推し進めてきた著者。その知見を結実させ、「事業構想」を新たな学問領域として体系化したのが本書だ。
本書の出発点には、日本の長期停滞の深層に「構想力の空洞化」という構造的課題を見出す鋭い問題意識がある。効率化と短期的成果への過度な傾斜が、企業から未来を描く力を奪ってきた。本書は、その病理への処方箋の根拠を、日本の産業史と思想史の中に丹念に見出し、渋沢栄一、松下幸之助らの偉業や近江商人の理念等に「構想の叡知」の源流を探り、そこから普遍的な理論を編み上げようとする。この方法論的自覚が、本書を単なる提言から学術的体系書へと押し上げている。
序論「構想力の復権」に始まり、学術的基礎、構成原理、プロセスと方法、理論の射程と応用へと展開する。全篇を貫くのは、「構想」を属人的な直感や経験則の領域から引き離し、再現可能な知の体系として定位しようとする姿勢だ。経営学や社会学をはじめ、国内外の膨大な先行研究に照らしながら、事業構想学は何を目指し、いかなる手法でそこに至ろうとするのかを明確に描き出す。
そこで「事業構想」は、「我々は何をなすべきか」「どうあるべきか」の全体像を描き、それに向かって事業を創造し、実践していく営みと定義される。この「青写真」の存在が、偶発的なアイデア発想とは一線を画し、より戦略的で、持続性の高い価値創造へと進展させるというのだ。
この意味での「構想」は、優位性あるプロダクト、価値共創の市場、理念を具現化する組織能力という三つの構成原理を骨子とする。そしてこの構成原理は、理論と実践を螺旋状に往還させながら構想を練り上げていく「事業構想サイクル」という動態的な方法論へと展開する。本書ではこのサイクルの新規事業開発等における実践例も示される。
理論と実践の不断の往還を前提とする「知」。これは、明治の近代化以降、西洋の学問体系を受容しつつも独自の発展を遂げてきた日本の知的営為そのものを再構築しようとする試みである。さらに著者は、日本固有の文脈から出発したこの理論体系を、グローバルな社会にも貢献しうる普遍的な知に鍛え上げようともしている。
未来を自ら描き出せる人材をいかに育てるのか。どのような知的基盤が必要か。そうした問いに向き合うすべての人に、小さからぬ驚きと希望とを与えてくれるはずだ。
新刊一覧
●教育学
学校の法律がこれ1冊でわかる教育法規便覧 令和8年版
窪田 眞二、澤田 千秋 著/624頁/
4200円+税/学陽書房
美的経験と個性
ジョン・デューイと教育・デモクラシー・
芸術をめぐる思想
西本 健吾著/296頁/5000円+税/
勁草書房
●学校教育一般
「けテぶれ」からはじめる自由進度学習
葛原 祥太 監修、新井 雅人 著/176頁/
2000円+税/明治図書出版
子どもの側から授業をつくる
若松 俊介 著/160頁/
2000円+税/東洋館出版社
●学級経営
臆病者の学級経営
古舘 良純 著/180頁/
1900円+税/東洋館出版社
●ICT
いちばんやさしい
先生が校務に使えるGoogle NotebookLMの教本
山本 康太 著/208頁/1800円+税/インプレス
365日の学級経営ToDoリスト
使える仕事術&デジタルツール
谷中 優樹 著/144頁/
2000円+税/明治図書出版
●幼児教育
よい保育とは何か
技術的実践から倫理的・政治的実践へ
グニラ・ダールベリ、ピーター・モス 著、
浅井 幸子、佐川 早季子 監訳/280頁/
4200円+税/北大路書房
●特別支援教育
自立活動×ソーシャルスキル
心が動き出すあそび100
いるかどり 著/128頁/2200円+税/
時事通信出版局
不登校は病気?
医師の診断が子供と家族を救う
飯島 慶郎 著/224頁/1700円+税/
みらいパブリッシング
●人材育成・マネジメント
Googleで学んだ 圧倒的成果を出し続
けるマネジャーの最優先事項
中谷 公三、諸橋 峰雄 著、水野 ジュンイチロ 著・漫画/
456頁/2300円+税/
ディスカヴァー・トゥエンティワン
キャリアエンゲージメント
ミドルシニアの自律と越境
田中 研之輔、桝中 美佐 著/234頁/
2400円+税/千倉書房
エグゼクティブコーチが教える
戦略と組織づくりの教科書
三浦 将 著/288頁/2000円+税/
クロスメディア・パブリッシング
チームは未来志向の対話でうまくいく
ジャッキー・スタブロス、シェリ・トレス 著、
佐々木 寛子 訳/336頁/2300円+税/
ディスカヴァー・トゥエンティワン
●その他
「頭がいい」とは何か
勅使川原 真衣 著/224頁/
950円+税/祥伝社
予備校盛衰史
小林 哲夫 著/320頁/
1080円+税/NHK出版
中学受験に向いてる子 向いてない子
子どもの可能性をつぶさない進路ガイド
谷 咲 著/192頁/
1500円+税/Gakken
中学へ旅立つ君へ
13歳からの一番大切なこと
おおた としまさ著/192頁/1400円+税/
実務教育出版
注目の一冊
自己との対話
社会学者、じぶんのAIと戦う』
吉見 俊哉 著/336頁/
1100円+税/集英社新書
生成AIが急速に社会へ浸透するなか、人間は何を考え、何を学ぶべきか。本書は、社会学者の著者が、自身の全著作を学習させた「AI吉見くん」と対話するという前例のない試みだ。
AIは一貫した思考を持つのか、反論は可能か、矛盾を認識できるのか。身体を持たない存在は、どこまで思考できるのか。こうした問いを通じて、社会学、大学、都市、世界情勢といったテーマで横断的な議論が展開される。
なかでも重要なのが教育だ。AIを排除も全面移譲もできない時代に、教育が担うべき役割を改めて考えてみたい。