『これからの「善い企業」の条件─ビジネスの力で社会を変えるB Corp™経営への挑戦』
『これからの「善い企業」の条件
─ビジネスの力で社会を変えるB Corp™経営への挑戦』
黒田 由貴子 監修、ピープルフォーカス・コンサルティング 著
/360頁/2000円+税/プレジデント社
企業は何のために存在するのか。この古くて新しい問いに対し、本書は「利益の最大化」を唯一の目的とする従来の前提をいったん脇に置き、企業活動が社会や環境に与える影響そのものを出発点として捉え直す。背景にあるのは、環境問題や格差の拡大、サプライチェーン上の人権課題といった、企業が無関係ではいられない現実だ。こうした状況のなかで広がる「ステークホルダー資本主義」を軸に、これからの「善い企業」の条件を具体的に描き出していく。
手がかりとなるのが、国際認証であるB Corpの考え方である。B Corpは単なる認証制度ではなく、企業を「社会をより良くする力」として位置づけるものだ。株主だけでなく、従業員、顧客、地域社会、環境といった多様なステークホルダーへの責任を経営の中核に据える。本書はその評価枠組みであるBIAを参照しつつ、企業が自らの活動をどう点検し、どこを変えていくべきかを具体的に示していく。
本書はまず、ステークホルダー資本主義の基本的な考え方を整理したうえで、「従業員」「コミュニティ」「環境」「顧客」「ガバナンス」という5つの視点から、企業が果たすべき責任を検討する。特徴的なのは、それらを理念にとどめず、実務レベルの問いとして落とし込んでいる点である。
例えば従業員マネジメントに関しては、単に働きやすさを整えるという話では終わらない。経済的補償、心身の健康と安全、キャリア開発、エンゲージメントという、BIAが重視する4つの領域を通じて、組織のあり方そのものを問い直す。そこを貫く概念として提示されるのがDEIであり、とりわけエクイティ(公平性)についての掘り下げが印象に残る。全員を同じように扱うことではなく、歴史的・構造的に生じてきた不利な状態を見据え、必要な支援や機会を配分すること。その具体像として、日本企業に残るジェンダー構造や役割期待の固定化に踏み込み、表層的な制度整備では届かない問題を浮き彫りにしている。
さらに本書は、こうした個別領域の改善を積み上げるだけでなく、社会課題の解決と事業成長を両立させるインパクト・ビジネスモデルの可能性や、組織開発の手法にも踏み込む。B Corp認証の取得そのものを目的とするのではなく、その基準を鏡として、自社がどのような価値を社会に生み出しているのかを問い続けるための思考と実践の枠組みが提示される。自社はどのステークホルダーにどのような影響を与えているのか。その問いに正面から向き合うにあたり、本書が力強い指針なるだろう。
新刊一覧
●教育学
創造的自己研究ハンドブック
創造性を発揮するための心理学的探究
マチェイ・カルウォフスキ、ジェームズ・C・カウフマン 編、
安斎 勇樹、岡田 猛、石黒 千晶 監修/
320頁/4500円+税/ナカニシヤ出版
●学校教育一般
教師のためのリフレクションと対話
「やってみての気づき」を授業検討会や
校内研究に活かす
渡辺 貴裕 著/232頁/2400円+税/日本標準
探究的な学び
その背景と実装のデザイン
久保 賢太郎 著/212頁/2100円+税/東洋館出版社
「主体的・対話的で深い学び」を
実装する「学びのプラン」
教科と探究をつなぐ新たな学びへ
髙木展郎 著/160頁/1700円+税/明治図書出版
●学級経営
「当たり前」をやめるとクラスが回る!
あえてやらない学級づくり
松尾英 明 著/120頁/2000円+税/学陽書房
●ICT
今すぐ使える Google for Education
× Gemini実践ガイド
~授業準備・課題作成・個別支援・校務DXまで
平塚知真子 著、平井聡一郎 監修/
216頁/2500円+税/技術評論社
教育現場のための
AI導入&活用ガイド2026
インプレス教育ICT書籍編集チーム 編/
96頁/1200円+税/インプレス
●幼児教育
教えて!マメ先生
0・1・2歳児保育をアップデートする
11のアプローチ
大豆生田 啓友 著/96頁/2000円+税/Gakken
●特別支援教育
不登校の子の親が今すぐやめること、
始めること
東 ちひろ 著/208頁/1600円+税/
明治図書出版
クラスのみんなが快適に過ごせる
視覚支援を活かした教室環境づくり
アイデア集
竹澤 萌 著/152頁/2000円+税/中央法規出版
「きく」力を鍛える ききみみドリル
「きく」ことに困難を抱える人のために
小渕 千絵、坂本 圭 編著/224頁/
2300円+税/学苑社
●人材育成・マネジメント
コンテキスト・リーダーシップ
「最高の上司」と「最悪の上司」は文脈で決まる
山口 周 著/400頁/1100円+税/光文社
チーム・インテリジェンス
才能を引き出し、最高の成果を上げる組織のつくり方
ジョン・レヴィ 著、小山 竜央 監修、
島藤 真澄 監訳、服部 聡子 翻訳/336頁/
2200円+税/KADOKAWA
なぜ、優秀な人ほど「変化」でつまずくのか
内村 創 著/200頁/1700円+税/
ディスカヴァー・トゥエンティワン
誰もが成長し活躍する会社のしくみ
「スキルベース組織」という新しい人材マネジメントの実践法
小出 翔 著/336頁/1800円+税/プレジデント社
なぜ日本企業は変われないのか?
真のリーダーのための組織改革入門
藤間美樹 著/186頁/1500円+税/
日刊現代、講談社
●その他
30億ビッグデータからわかった
勉強のできる子と親がやっていること
今木智隆 著/304頁/2000円+税/
BOW & PARTNERS
人新世の教育論
「借り」の学習と共(コモン)の創造
楠見 友輔 著/216頁/本体2500円+税/
慶應義塾大学出版会
注目の一冊
『『ひろがる鑑賞』
三澤 一実 編/288頁/
2500円+税/武蔵野美術大学出版局
今日の教育が目指すウェルビーイングとは、身体・精神・社会の調和した状態のことだ。本書は、その基盤としての「鑑賞」に着目し、人のあり方との関わりを多角的に捉え直す。
美術を自由に味わう営みは、本来、日常のなかで育まれる感性と結びついている。そうした視点から、映像やイラスト、彫刻、工芸といった表現領域に加え、美術館での世代を超えた対話や教室での実践へと論点を広げる。
鑑賞という行為が、日常の見え方や他者との関係の捉え方にどのように関わるのか、各分野の実践例が興味深い。