名古屋大学 東海国立大学機構の設立で、地域の課題解決からグローバル展開へ

今年4月、一法人複数大学制度の国内初事例として、名古屋大学と岐阜大学による「東海国立大学機構」が設立された。国際的な競争力向上と地域創生への貢献を目指すため、どのようなチャレンジが始まっているのか。機構長に就任した名古屋大学の松尾清一総長に、その意義と抱負を聞いた。

加速する産学連携、大学の知を社会に還元

──総長に就任された2015年、任期内に達成すべき目標を定めた「NUMIRAI 2020(松尾イニシアティブ)」構想を掲げられました。これまでの進捗はいかがでしょうか。

松尾 清一

松尾 清一

名古屋大学総長
1950年兵庫県生まれ。医学博士(専門は腎臓内科学)。1976年名古屋大学医学部卒業後、米国マウントサイナイメディカルセンター研究員、米国ニューヨーク州立大学研究員等を経て、2002年に名古屋大学大学院医学研究科教授に就任。2007年に名古屋大学医学部附属病院長、2009年名古屋大学副総長を歴任し、2015年に名古屋大学総長に、2020年4月には東海国立大学機構長に、就任する。人生100年時代構想会議議員、総合科学技術・イノベーション会議議員も務める。大学ホームページで日々の動向を発信するなど、開かれた大学運営にも力を入れている。

名古屋大学を世界屈指の研究大学にすべく、非常に精力的に進めています。特に、産学連携や社会連携の試みを強力に推進しており、大学の知的成果を応用研究や社会実装に活用する動きが加速しています。これは私が総長になる前から着手していたことではありますが、ここ数年間はその成果が相当に出ています。中部経済連合会(中経連)、中部経済同友会、名古屋商工会議所をはじめ、経済団体や産業界との交流が活発になったことで、企業との共同研究や人材交流など、産学連携が非常にやりやすくなってきました。実際、産学共同研究の数はこの7~8年で3倍近くに急増しています。

産業界のサプライチェーンは、県境は言うに及ばず国境さえも一切を超えて広域で展開されているなか、アカデミアの世界も県ごとにサイロ化した状況に…

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