『学習科学ハンドブック 第三版』 「学び」の研究の最前線
『学習科学ハンドブック 第三版』
R. K. ソーヤー 編、河﨑美保、望月俊男、益川弘如、秋田喜代美、大島純 監訳
/10000円+税/北大路書房/
2026年9月
人はどのように学ぶのか。その仕組みを研究し、よりよい学びの環境づくりにつなげようとする「学習科学」。教育心理学や認知科学、コンピュータ科学、人類学など、さまざまな領域を横断して発展してきた学問だ。本書は、その研究成果を集大成した国際的なハンドブックの第三版。2014年の第二版以降の研究を取り込み、全6パート・33章で学習科学の現在地を紹介する。
私たちは既に持っている知識や経験をもとに新しいことを学んでいる。他者との対話や協働によって考えを深め、自分の理解を言葉や図などで表し、振り返りながら学びを進めていく。「学ぶ」という行為を細かく見ていくと、そこにはさまざまな働きがある。わかったつもりのことを言葉にしてみる。図など別の表現に置き換えてみる。他者に説明して問い返されることで考えを明確にする。こうした1つひとつの行為を研究の知見から捉えることで、自分の学び方や、人の学びを支える方法を考える手がかりも見えてくる。
例えば、自力では難しい課題に取り組む際、必要な支援を加え、できるようになるにつれて徐々に外していく「足場かけ」。自分が何を理解し、どこでつまずいているかを捉えるメタ認知。他者との協働を通じた学習。本書では、こうした学びの仕組みやそれを支える方法がどのような研究によって明らかにされ、学習環境のデザインにどう生かされてきたのかをたどっていく。さらに、学びの変化をどう観察し、分析するのかという研究方法も主要なテーマの1つである。
本書が扱う学びの場やテーマは幅広い。ビデオゲーム、拡張現実、モバイルラーニングなどのテクノロジー、ミュージアムでのインフォーマルな学習、数学・科学・歴史・芸術など領域ごとの学び、文化的多様性や社会的公正、教師の学び、教育政策までを取り上げる。学校教育に携わる人、地域や組織で学びの場をつくる人、自分自身が何かを学んでいる人など、それぞれが自分の関心や課題に引き寄せて読めるテーマがそろっている。
各章の冒頭に訳者による解説を掲載し、章の要約や読みどころに加え、研究の背景や日本への示唆も示され、専門書ながら読み進めるための手がかりは多い。海外で積み重ねられてきた研究を、身近な学びに引き寄せて考える助けにもなる。普段は何気なく行っている教え方や学び方も、研究者の視点を通して見ると、なぜうまくいくのか、どこを変えられるのかが見えてくる。自分が関わる学びの場をあらためて観察し、次に何を試すかを考えるきっかけになるだろう。
新刊一覧
●教育学
教員環境の国際比較
OECD国際教員指導環境調査(TALIS)2024報告書
国立教育政策研究所 編/416頁
4,500円+税/明石書店
魂の教育
あなた自身が輝く子育て論
向井秋久 著/256頁
1,800円+税/フローラル出版
みんなの教育思想・入門講義
教育者たちの子どもへのまなざしは驚くほど面白い!
辻󠄀直人 著/192頁
2,100円+税/梓出版社
●学校教育一般
教育者のためのコーチング入門
木村彰宏 著/410頁
2,300円+税/東洋館出版社
●学級経営
学校が動き出す ミドルリーダーの半径5メートル改革
生井光治 著/224頁
2,200円+税/明治図書出版
教師の「抱え込まない」働き方
上手に線を引く先生の仕事のルール
山崎大樹 著/192頁
1,960円+税/明治図書出版
●特別支援教育
「なんとかしなきゃ」が「まぁ、いっか」に変わる
発達特性のある子の子育て
5万人以上の子どもを診てきた小児科医・児童精神科医が伝える
そら先生 著/216頁
1,800円+税/中央法規出版
マンガと図解でわかる はじめてのPBS
子どもと学校のお悩みはポジティブ行動支援で解決!
大対香奈子 著、川口真目 漫画/176頁
2,100円+税/Gakken
学校の中のディスアビリティ
通常学級における発達障害児支援をめぐって
松浦加奈子 著/296頁
3,600円+税/明石書店
●人材育成・マネジメント
成長の地図
しなやかなタフさを手に入れる5つの旅路
荒木博行 著/256頁
1,800円+税/東洋経済新報社
成長組織の先読み人事戦略
必ず訪れる「成長フェーズごとの壁」を乗り越える組織のつくり方
森洋一郎 著/256頁
2,200円+税/日本能率協会マネジメントセンター
こんな会社で働きたい
若手が成長する グロース&イノベーション編
クロスメディアHR総合研究所 著/138頁
1,600円+税/クロスメディア・パブリッシング
ポストAI革命
組織とあなたの生存戦略
保科学世 著/456頁
2026年10月/2,700円+税/日経BP
人材開発・組織開発の臨床知
科学知ではつかみとれないプロフェッショナルたちの流儀
中原淳 著/384頁
2026年10月/4,300円+税/東京大学出版会
●その他
これからの時代を生き抜く非認知能力
AIに奪われない力を家庭で身につける方法
吉田智雄 著/216頁
2026年10月/1,800円+税/プレジデント社
注目の一冊
『世界一わかりやすい創造性の授業
AI時代を生き抜く学習メソッド50』
中島亮太郎 著/224頁/
2000円+税/翔泳社
AIが多くの知識や作業を代替する時代に、人に求められるのは「自分で問い、試し、つくり出す力」である。本書は、創造性を一部の人だけの才能ではなく、学習できるスキルと捉え、50のメソッドに体系化。長年デザインに携わった著者が、教育学の観点も交え、学び方を「わかる」「できる」「みつける」「カタチにする」「ためす」「つづける」の6段階で解説する。
知識を得るだけでなく、発想し、形にし、試しながら学ぶ方法を、企画や商品開発、日常の問題解決などにつなげるヒントも満載だ。